StudioMoccaが完成するまでを写真付きで解説します。
施工前の状態
自宅の離れのガレージが小さな家になっていて、その2階の7畳(押入れ込み)ほどの部屋をスタジオにします。
最初はこんな感じの出窓のある普通の部屋でした。
Box in Box工法
Box in Box工法は、簡単に言うと『部屋の中に部屋を造る』です。
外側の部屋と内側の部屋の間に『空間層』を設ける事で音波を減衰する事ができます。
とは言え、施工場所は30年前に建てられた普通の部屋。
面積は狭いし天井も2.4mしかありません。
なので空間層は最低限の40~50mmにする事にしました。
なぜ40~50mm?については後に出てきます。
ある程度の構想は頭の中にあって簡単にノートに書きましたが、決まった設計図は無し。
やりながら問題に直面する事は想定していたので、分からないなりにその都度勉強して考えて設計しながら施工しました。
押入れ解体
押入れの解体のポイントは上方向に壊す!
当たり前の事ですが、押入れには物が置ける仕様になっているので下方向の力には耐える様に造られています。
なのでいくら上からハンマーで叩いても腕を痛めるだけです。
天板を外してネダを外して、、、順序良く下から上に向けて叩けば簡単に解体できます。
叩いても無理そうな構造なら中心をノコギリで切って上下左右に動かして外していきます。
天井の補強
Box in Box工法の天井は、『天井に天井をぶら下げる』です。
補強を何もせずに天井に天井をぶら下げたら重さで天井が落ちます。
なので屋根裏に入って、天井が付いているネダ自体が落ちない様に補強する必要があります。
殆どの家には屋根裏に入る為の点検口があります。
この建物の場合は、押入れの天井に薄いベニヤ板が乗っているだけの点検口がありました。
屋根裏に入る際の注意点!
ネダ以外は全て天井の石膏ボード。全体重でネダ以外を踏んだら抜け落ちます。
ドリフのコントみたいに抜け落ちます。大変です。
もう一つは屋根材を打ち付けてる釘。
五寸釘が何本も屋根から刺さっているので頭上注意!
私も油断して1回だけ頭に刺さりました。軽傷。
補強は写真の様にネダと梁をたくさんの角材で繋げて補強しました。
天井の施工
天井にぶら下げる天井は防音壁仕様の天井です。
既存天井に新規ネダをビス固定します。
ネダを打ち付ける際に、よくエアコン室外機の足に付けられている『防振ゴム』を間に挟みます。
ネダは30ⅹ40㎜の木桟(モクサン)、防振ゴムは10㎜厚。
ネダの30㎜と防振ゴムの10㎜を足すと40㎜。
『Box in Box工法』の項目で出てきた『空間層40㎜~50㎜』の40㎜がこの事です。
設置した木桟に合板等を付けて防音壁を施工していきます。
天井の防音壁の構造は以下の通りです。
【9㎜合板+1.2㎜遮音シート+30㎜木桟+9㎜合板】+【1.2㎜遮音シート+30㎜木桟+9㎜合板】
の2層構造です。30㎜木桟の30㎜の空間層には50㎜厚の『ロックウール』を詰め込みます。
30㎜の中に50㎜の綿ですからパンパンです。
ロックウールは俗に言う断熱材です。
一番メジャーな断熱材はグラスウールですが、吸音材としてはグラスウールよりロックウールの方が吸音率が高いらしいです。
グラスウールが2千円だとしたらロックウールは3千円位の差がありますが、妥協はしたくなかったので全てロックウールを採用しました。
天井にはもちろん点検口を設けました。
点検口の蓋も防音壁仕様にしたので、蓋だけで7.7kgになりました。
ダクトレール施工
天井施工完了までの間に困ったのは照明。投光器を使用して作業していました。
よくあるリハーサルスタジオやお店の照明に使われているレールタイプの照明を採用しました。
これに付ける照明はやっぱ調光式でしょ!って思っていましたが、結構高価な物だと知り普通のLED照明にしました。
ダクトレールは自由自在に照明の位置も個数も変えられるので便利!
壁の施工
壁も天井と同じく、防振ゴムを咬ませてネダを取り付けて防音壁を施工します。
天井は高さの制限があったので薄い9㎜合板を使用しましたが、壁の厚みは部屋が狭くなるだけなので気にせず12㎜合板を使用しました。
最初は天井と同じ様に2層構造を考えていましたが、防音重視!と思い3層構造に変更しました。
間に挟まる部分の板は、経費削減で石膏ボードにしました。しかも9.5㎜石膏ボード。
この選択はNGでした。12㎜石膏ボードよりかなり弱いです。しかも薄い分防音効果が下がります。
これから防音室を造ろうと思っている方は12㎜石膏ボードを使ってください!
壁の防振ゴムは天井の時と違い1箇所に2枚重ねて使いました。
ネダの30㎜と防振ゴムの10㎜×2枚を足すと50㎜。
『Box in Box工法』の項目で出てきた『空間層40㎜~50㎜』の50㎜がこの事です。
構造は、12㎜合板+1.2㎜遮音シート+30㎜木桟+9㎜石膏ボード】+【1.2㎜遮音シート+30㎜木桟+9㎜石膏ボード】+【1.2㎜遮音シート+30㎜木桟+12㎜合板】
東面と西面は窓があったので12㎜合板と遮音シートを窓枠にはめ込んでから施工しました。
ドア枠の施工
スタジオ造りで一番難しく時間が掛ったのがドアとドア枠です。
ドアのサイズが決まっていないとドア枠の設計が出来ないので時間を掛けて設計しました。
当初の予定では防音ドア1枚+建物入口のドア1枚でしたが、防音扉2枚+建物入口のドア1枚に変更しました。
写真で分かるように、ドア枠の上の部分から施工しました。この部分も防音壁と同じ様な構造になっています。
ドア枠縦の部分はツーバイ材を組み込んで鋼製束でジャッキアップしてあります。
これがまた大変で、垂直に立てる為に何十回も『立てて』『下して』『やり直して』の繰り返しをやっていました。
一人作業ですから、本当に大変でした。
ドア枠の側面になる幅1メートル程の壁も防音壁と同じ構造です。
この部分の設計施工もかなり頭を使って慎重にやってました。
何もないところに柱と壁を造るという事が難しかったです。
床の施工
床も空間層を造る為に『万協フロア』を使いました。
万協フロアの正式なやり方ではなく、自分なりのやり方で施行しました。
構造は万協フロア+【12㎜合板+1.2㎜遮音シート+30㎜木桟+12㎜合板】+【1.2㎜遮音シート+30㎜木桟+12㎜合板】+6㎜サイルシート+12㎜合板+2.5㎜塩ビタイル。
6㎜のサイルシートはアスファルト素材でできたシート。
一般住宅の2階の床材の下に敷かれていて足音が1階に伝わりにくい効果があります。
モール材の施工
一般住宅の天井と床周りに付いている廻縁と巾木(モール材)をどうするかも悩みました。
悩んだ結果自作する事にしました。
ツーバイよりも薄いワンバイ材を使用しました。
塗料はカインズオリジナルの『サンドグリーン』を使用しています。
大型鏡とホワイトボードの取付
スタジオといえば大型鏡!このこだわりだけは譲れなかったです。
3枚で送料込み9万円ほどでした。
梱包材も含めて1枚46㎏。笑っちゃうほど重くて引きずりながら階段を上りました。
モール材に乗せる感じで貼り付けたので設置はさほど難しくなかったですが、やはり初めての事なのでドキドキでした。
貼り付けは専用ボンドと専用両面テープのみ。
もう一つのこだわりはホワイトボードです。
よくあるリハーサルスタジオにあるのは紐でぶら下げる様な物だったり、学校や会社にもある様なスタンド付きのホワイトボードが主流だと思います。
StudioMoccaはオールDIYの利点を生かして壁に貼り付けてモール材で囲いました。
最初は壁にホワイトボード用の塗料を塗ろうと思いましたが、上手くいく気がしなかったのでネット通販で購入した大型1枚・中型1枚を貼り付けました。
ドアの施工
通常スタジオにある鉄製の防音ドアは分厚い物だと一枚平均70万円ほどもするので、防音ドアも自作する事にしました。
普通のドアの構造は芯材があって芯材を2枚の板でサンドイッチしてるような感じです。
防音壁も同じなので、防音壁と同じ要領でドアを造ります。
3㎜カラー合板+15㎜合板+1.2㎜遮音シート+38㎜ツーバイ+15㎜合板+3㎜カラー合板。
ツーバイ は反りが少ない『サーモウッド』を使用しています。
組み合わせた面はアルミ製材で隠します。
組み合わせた厚みは75.2㎜。
実際にはビスの打ち方や反り等の影響で単純計算よりも厚くなります。
80㎜×2㎜厚のコの字型のアルミチャンネルがあれば内寸76㎜でちょうど良かったのですが、ホームセンターには売ってないので40㎜のL型のアルミアングルを組み合わせる事にしました。
このドアは1枚推定80kg。丁番は大きいサイズのを3個使用。
耐荷重○○kgの表示がないので一か八かで選んでます。
丁番の取付と設置は大変でしたが一人でやり切りました。
扉の重さで下がってしまう事を想定して戸車を2個取り付けました。
吸音材の貼り付け
吸音材は25㎜厚のグレーのウレタンを選びました。
貼り付けは両面テープだと剝がれるのでタッカーを打ち付けて貼り付けました。
のちにリニューアルとして50㎜厚のパープルのウレタンに変更しました。
StudioMocca完成!
ご紹介したのはほんの一部ですが、1年2ヵ月かけて完成しました。
ほぼ一人作業でしたが、近所の友達に資材搬送や天井貼りの一部を手伝ってもらったり、建築関係の先輩方にもアドバイスを頂き感謝しています。
防音室を造りたいとお考えの方は私が得たノウハウをお伝えいたしますのでご連絡ください。
Special thanks to
アントニオ小山さん
佐藤慎一郎さん
有賀和人さん
岩田剛さん
阿部仁也さん
内富俊博さん
大川昇さん
廣崎有美さん
紀國谷祐輔さん
スタジオの完成を応援して頂いた皆様